「決断疲れ」とは?優先順位がつけられないのは“脳の疲労”が原因だった
【「決断疲れ」とは?
選べないのはあなたのせいじゃない】
やるべきことが多すぎて、どれから手をつけていいか分からない…。そんなとき、つい「自分はダメだな」と責めてしまっていませんか?
でも実はそれって、あなたの意志が弱いせいではなく、脳の仕組みのせいかもしれません。心理学ではこの現象を「決断疲れ(Decision Fatigue)」と呼びます。
「決断疲れ」とは?
「決断疲れ」とは、たくさんの選択や判断を繰り返すことで、脳が疲弊し、判断力や意欲が低下する現象のことです。行動心理学者のロイ・バウマイスターらの研究によると、人間の意志力や自己制御力は、使えば使うほど消耗する有限なリソースだと考えられています。
ちなみに、「朝、何を着るか」といった小さなことから、「仕事や進路の決断」のような大きなものまで含めると、人間は一日に約35,000回もの決断をしていると言われています。これを聞くと、疲れてしまうのも納得ですね。
有名な実験:裁判官の判断
イスラエルの研究(Danzigerら, 2011)では、裁判官が仮釈放の可否を判断する際のパターンが調査されました。この研究は、裁判官の決定が、純粋に法的な根拠だけでなく、精神的な疲労や空腹といった無関係な要因に影響される可能性を示唆しています。
分析の結果、以下の驚くべき傾向が明らかになりました。
- 食事休憩直後: 仮釈放の承認率は約65%という高い水準でした。
- セッションの終わり(休憩直前): 承認率は徐々に低下し、セッションの最後にはほぼゼロにまで落ち込んでいました。
休憩を挟むたびに承認率は回復し、このパターンは繰り返されました。この現象は「空腹の裁判官効果」とも呼ばれ、合理的な判断を求められる専門家でさえ、精神的なエネルギーが枯渇すると、より思考を要する「仮釈放を承認する」という決断を下しにくくなることを示しています。つまり、この研究は、人間は疲労や空腹によって保守的で無難な選択(この場合は却下)をしがちになる、という見方を裏付ける事例なのです。
なぜ真面目な人ほど疲れるの?
真面目な人ほど、以下のような傾向が見られませんか?
- 「正解を出したい」という意識が強く、選択に時間をかけすぎる。
- 「間違えたくない」気持ちが強く、選択肢を徹底的に比較しすぎる。
このような思考パターンは、脳のリソースを大量に消費するため、より疲れを感じやすくなってしまうのです。
対処法:選択の負担を減らす工夫をしよう!
決断疲れを軽減するために、日常でできる工夫をご紹介します。
- ルーティン化する: 朝の服、昼食、タスクの順番など、毎日行うことをパターン化して、決断の機会を減らしましょう。
- 重要な判断は、疲れていない時間帯に行う: 集中力やエネルギーが満ちている朝に、重要なタスクや決断を行うようにスケジュールを組みましょう。
- 「完璧」を目指しすぎない: 「とりあえず」「まず1つだけ」のように、完璧主義を手放して考えることも大切です。
まとめ:選べない、決められないのは「意志が弱い」のではなく、脳が疲れているサイン。
だからこそ、自分を責めず、優しく労わることが大切なんです。今日のあなたは、頑張ってたくさんの決断を下した自分をぜひ褒めてあげてくださいね。
【監修:Nカウンセリングオフィス】
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