【成人の日】精神的自立と大人になるということ

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はじめに

  2023年の成人の日は1月9日月曜日ということで、今回は「大人になる」≒「自立」と言うことについて考えてみましょう。あくまでも「大人になる」≒「自立」ということで「大人になる」=「自立」とまでは言いません。人として自立しているかどうかを考える際によく言われるのは、「生活的自立」「経済的自立」「精神的自立」という3つの視点から考えるものです。


・「生活的自立」・・・歩行、移動、食事、排泄などの日常生活動作だけではなく、より複雑な生活動作や、状況を判断して行動する能力などが含む能力のこと。

・「経済的自立」・・・自らが必要とする生活費を預貯金や年金、財産収入などの「自分の収入」で賄うことができること。

・「精神的自立」・・・「自分の意思で物事を判断し、自分の責任で行動することができる能力」のこと。例えば、日常生活の中で何かを選ぶ際に状況に応じて「自分の人生の価値基準に沿って自分自身で選択する」ことです。自分の意思で「どのような選択をするか」を決定して、それに対して自分で責任をもって行動することを「精神的に自立している」という風に心理学では考えています。


 心理学の世界において、「精神的自立」を計る尺度としては2003年に鈴木、崎原らが作成した「精神的自立尺度」と言うものがあります。尺度というのは、簡単に言えば専門家が研究を重ねて作った、ちょっとした(でも、作るのはとても大変です)質問紙のことです。一般的には心理テストと言われることが多いかもしれませんね。


 ここでは「精神的自立尺度」における8つの尺度を引用してみます。各尺度を眺めつつ、みなさんも少し日頃の自分自身について考えてみましょう(以下の尺度は「そう思う」「どちらかというとそう思う」「どちらかというとそう思わない」「そう思わない」の4件法です)。


精神的自立尺度

1. 趣味や楽しみ、好きでやることをもっている

「自分だけの時間を充実して過ごせていますか?」せっかくの休みの日に、気がつけばスマートフォンやTV、PCをずっと見ていたりしませんか?その活動に充実感を得ている場合は問題ありませんが、なんとなくスマートフォンを見て、動画やSNSを見て過ごしてしまうと、夕方頃になって「今日も何もしなかったなぁ」という不全感のようなものが出てきたりしますよね。言うまでもなく、このような状態は「自分一人の時間を楽しんでいる」とは言い難いでしょう。


2. これからの人生に目的をもっている

「これからどんな自分になりたいですか?」自分の中で向かっていきたい方向性があるかどうかは、日々の生活や行動に大きな影響を与えます。「今年はこの資格を取ろう」「アルバイトで毎月4万円稼ごう」といった短期目標や定期的に活動・収入を得るような目標を設定することも良いですし、「4年後には、こんな大人になっていたい」といった少し長期的な目標も良いと思います。「今の自分に足りないと思っているもの」で、また「心からそうなりたいと感じるもの」を目標にすることが大切なポイントです。


3. 何か夢中になれることがある

時間を忘れるほど熱心に取り組めることはありますか?ここで重要なのは恋愛や友人関係のような「依存を含む他者との関係性」ではなく、あくまでも自分自身に向きあう活動であることがポイントです。あくまで「自立」であって、「依存」的な夢中はここではNGです(適度な依存の大切さは、また別の機会に書きたいと思います)。


4. 何か人のためになることをしたい

「何か人のためになる行動」とは、家族や友人のような身近な人の手助けをしたり、ボランティア活動や地域の活動にも参加するなど、他者へのおせっかいや善意の押しつけ、または感謝されることを目的としたものではなく、自分と他者の適度な精神的な距離感を保ちつつ、「相手も自分もちょうど良いと感じられる行動」のことです。精神的に自立できている人は、適度に自己肯定感が高く、自分のためだけでなく「人のため」の行動がしやすくなると考えられているそうです。


5. 人から指図されるよりは自分で判断して行動する方だ

人から指示されてから動いたり、誘いを受けてから行動するような「受動的な行動」は、精神的な自立とは真逆の行動です。自分で考えて自分で決定・行動するという「主体的な行動」が適度なバランスで取れることは、精神的な自立において大切なことだと考えられています。


6. 状況や他人の意見に流されない方だ

「親が言っていたから」「ネットに書いてあったから」「みんながしているから」等、他者の意見、特にSNSやウェブサイトなどのインターネット上の意見や考えに流されやすい時代です。人の意見に耳を傾けることは大切なことですが、精神的な自立を目指す時には「自分の人生における価値や考え、方向性を元に自分自身の意見を持つこと」がとても重要です。不安だとついついネットに頼りすぎてしまうかもしれませんが、ネットには必ずしも「あなたにとって正しいことや必要なこと」が書かれているわけではないですよね。


7. 自分の意見や行動には責任をもっている

自分の決定や行動の結果が上手くいかなかったときに、その責任を自分以外に押し付けてしまうことはありませんか?「家族のせい」「恋人のせい」「会社のせい」「社会のせい」等、ついつい「誰かのせい」にしたくなるものです。言うまでもないかもしれませんが「〜のせい」とう言うのは冷静に考えると「他者依存」なわけですよね。うまくいかなかったときは「その事実を受け入れて、次の機会に活かしていくこと」が大切なのは、みなさんもご存知の通りです。「自己決定の成功と失敗の繰り返し」の中で、精神的に自立した自己決定力が磨かれていきます。余談ですが、「〜せい」にする癖と、イライラ感はセットになりやすい傾向があります。


8. 自分の考えに自信をもっている

「自分で考えて決定する練習」を繰り返す中で、「既存の価値基準」や「周りの意見だけに影響されない力」がついてきます。「自己決定の成功と失敗の繰り返し」の中で「自分なりの価値観」が創られて、「他人は他人。自分は自分。」という自分自身へ信頼感や肯定感が高まり、失敗を恐れず(いや、失敗は怖くても)行動できるようになります。


おわりに

 いかがだったでしょうか?精神的な自立は必ずしも年齢に比例するわけではありません。また、自分が思っている程度と、他者から見た程度が違うこともあります。ちなみに、完璧である必要はありません。8つの視点から考えてみて、今の自分自身が精神的に自立して、より幸せになるためのヒントが見つかれば幸いです。現在の自分のいたらなさに目を向けて、それを受け入れる作業にはエネルギーが必要です。このような視点を元に、カウンセリングで話をしてみることもおすすめです。今の自分自身を見つめる行動は、きっと自分自身を少しずつ成長させていくことに繋がります。

参考文献

精神的 自立性尺度の作成―その構成概念の妥当性 と信頼性の検討―


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