強迫性障害と向き合う—Dさんの物語 【後編】

 

強迫性障害と向き合う—Dさんの物語 【後編】

 前編では、強迫性障害に苦しむDさんが、就職活動という人生の岐路で、ついにオンラインカウンセリングを受ける決意をするまでの葛藤が描かれました。画面越しにカウンセラーと対面したDさんは、一体何を語り、そこから何を得ていくのでしょうか。ここからは、彼女の「心の対話」と、回復への道のりをお届けします。

 


心の対話:オンラインカウンセリングの始まり

カウンセラー(以下、Y:「こんにちは、Dさん。今日はお時間ありがとうございます。どうですか?今の気持ち、少し聞かせてもらえますか?」


D:「えっと、正直、すごく緊張してます。こんな話をするのは初めてで


Y:「緊張しますよね。初めて相談することって、大きな一歩です。でも、こうしてお話しできていること自体が、とても素晴らしいことですよ。」

Dさんは少し驚きました。今まで、自分の症状や悩みを誰かに話せるとは思っていなかったからです。


D:「あの私、強迫症だと思うんです。鍵を何度も確認してしまったり、手洗いが止まらなかったり。就活もあるのに、何をするにも時間がかかってしまって。もう、疲れてしまいました。」 


Y:「それはとても辛いですね。毎日、何度も確認したり、不安に襲われてしまうと、心も体も消耗してしまいますよね。」 


D:「はい。でも、やめようとしても、どうしても不安になるんです。もし失敗したらどうしようって、ずっと考えてしまって。」

  カウンセラーはゆっくりとうなずき、画面越しにDさんの目をしっかりと見つめました。



Y:「まず大切なのは、Dさんが一人でこれに向き合おうとしてきたこと。それ自体、とても勇気のあることです。そして、強迫症は誰かのせいでも、Dさんのせいでもありません。今は、『この不安とどう向き合うか』を一緒に考えていく時です。」

その言葉は、今までのDさんの考え方を少し変えました。「不安がなくならないと、私は何もできない」と思っていたDさん。しかし、不安があってもできることがあるのなら

 

回復への道と内なる変化

 オンラインカウンセリングを続けるうちに、Dさんは少しずつ変わっていきました。鍵の確認をする回数を1回に減らす練習をした日、手を洗う回数を意識的に減らしてみた日、失敗を恐れずにエントリーシートを提出した日

  

 ある日、友人とカフェに行った時、ふと気づきます。 「あれ?今、手洗いを考えずにコーヒーを飲めている。」

以前なら、コーヒーカップが誰かの手に触れたかどうか気になって、すぐに拭いたりしていました。でも今は、それよりも「友人との時間を楽しむこと」に意識が向いているのです。

 

 

 カウンセリングの画面越しに、Dさんは少し笑いました。


D:「最近、少し楽になった気がします。まだ不安はありますけど。」 


Y:「それは素晴らしいことですよ。大切なのは、不安があることを認めながら、それでも前に進めること。その強さを、Dさんは手に入れ始めていますね。」

Dさんは、初めて「自分を少し誇りに思う」という感覚を味わいました。 不安はなくならないかもしれない。でも、それと共に生きていくことはできる。


「私は、少しずつ変われる。」 その言葉が心に浮かんだDさんの物語は、強迫性障害に苦しむ多くの方に、希望の光を示すことでしょう。

 


Dさんの物語はいかがでしたでしょうか?この物語が、あなたの心に何か響くものがあれば幸いです。


おまけ

 Dさんの回復への道のりは、私たちに大きな希望を与えてくれます。しかし、なぜDさんは強迫性障害に苦しんだのか、そしてカウンセリングやその他の治療法は具体的にどのように作用するのでしょうか?

 Dさんの物語をさらに深く理解し、あなたの心にも役立つヒントを見つけるために、次の「編集後記」では、このストーリーに沿った心理学的な分析と、精神科・心療内科での服薬治療を含む専門的なアドバイスをご紹介します。ぜひ続けてお読みください。


※本ショートストーリーはフィクションであり、登場する人物、団体、場所などはすべて架空のものです。実在の人物や団体、出来事とは一切関係ありません。

 

【監修:Nカウンセリングオフィス

 

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