希望の道を歩む—パニック障害を発症したEさんの物語【前編】

 

希望の道を歩むパニック障害を発症したEさんの物語【前編】


努力家のEさんを襲った異変

 Eさん(26歳)は東京で働く会社員。黒髪のロングヘアが印象的な、真面目で努力家な女性でした。学生時代から「人一倍頑張らなきゃ」と思う性格で、どんな課題にも、どんな困難にも、常に全力で立ち向かってきました。社会人になってからもその気持ちは変わらず、むしろ増していくばかり。会社では若くしてプロジェクトリーダーを任され、周囲の期待に応えたい一心で、毎日遅くまで仕事に追われる日々でした。休日も仕事のことを考えたり、資格の勉強をしたりと、休む間もなく頑張ることが当たり前になっていたのです。体力の限界を超えても、「もっとできるはず」と自分を追い込み、無理を重ねていました。


 しかしある日の深夜、仕事の締め切りを目前に控えた、張り詰めた空気の中で、Eさんの体に異変が起こりました。パソコンに向かい作業をしていたその時、突然、強い動悸に襲われたのです。心臓が胸から飛び出しそうなほど激しく打ち、呼吸が苦しくなり、まるで自分の体が自分のものでなくなったかのように手足がしびれ、視界がぐらつく。全身を支配する「このまま死んでしまうかもしれない」という強烈な恐怖に駆られました。必死で呼吸を整えようとしましたが、症状は一向に治まる気配がありません。永遠にも思える時間が過ぎ、ようやく症状が収まった時には、ぐったりと疲れ果てていました。その出来事が、真面目なEさんの生活を根底から覆し、彼女の人生を大きく変えるきっかけとなったのです。

 

日常を蝕む不安の影

 一度経験したその強烈な発作は、Eさんの心に深い傷跡を残しました。それ以来、同じような発作が、予期せぬ瞬間に何度も繰り返されるようになったのです。特に、人混みの電車内や、逃げ場のない場所で発作が起きるのではないかという強い不安に襲われるようになりました。その恐怖は日に日に増していき、いつ発作が起こるかわからない不安に支配され、次第に外出も避けるようになってしまったのです。


 大好きだった休日のショッピングも、友人とのカフェ巡りも、すべてが苦痛に変わりました。まるで透明な壁に囲まれたかのように、行動範囲がどんどん狭まっていきます。仕事にも影響が出始め、会社を休みがちになり、成果も思うように出せなくなりました。上司や同僚からは心配されるものの、この体の異変と心の苦しみをうまく説明することができず、一人で抱え込み、さらに深く苦しんでいったのです。「なぜ自分だけこんな目に」「もう以前の生活には戻れないのだろうか」という絶望感が、Eさんの心を支配し始めていました。

親友の言葉がくれたかすかな光

 そんなある日、親友のYさんとカフェで久しぶりに会ったとき、Eさんはつい「最近、会社に行けてないんだよね」と、ぽつりと打ち明けてしまいました。Yさんは驚きつつも、Eさんの憔悴しきった様子を見て、優しく問いかけます。「何かあったの?E、最近元気ないように見えたから、ずっと心配してたんだよ。」


 Yさんの温かい眼差しと、心からの心配の言葉に、Eさんの胸の奥に押し込めていた苦しみが溢れ出しました。少し躊躇いはあったものの、背中を押されるように、ここ数ヶ月にわたるパニック発作の恐怖や、それによって失われた日常のすべてを、涙ながらにぽつりぽつりと話し始めたのです。


 Eさんの話に、Yさんは真剣に耳を傾けていました。そして、Eさんの話をすべて聞き終えると、Yさんは静かに、しかし力強く言いました。 「E、それって、もしかしたらパニック障害かもしれない。実はね、私の姉も以前、Eとまったく同じような経験をしてね、本当に辛そうだったんだ。でも、オンラインカウンセリングを受けたら、すごく楽になったって言ってたんだよ。」


 Yさんの言葉に、Eさんは驚きました。同時に、自分だけではなかったという安堵と、もしかしたら自分も変われるのかもしれないというかすかな希望が胸に芽生え始めます。 「私も変われるのかな?」Eさんは半信半疑でした。しかし、このまま苦しみ続けるのはもう嫌だ、なんとかして現状を変えたいという強い気持ちが芽生え、親友の言葉を信じてオンラインカウンセリングを受ける決意をするのです。

 この決断が、Eさんの閉ざされていた世界にどのような変化をもたらすのでしょうか?そして、彼女は本当に苦しみから解放され、再び希望の光を見出すことができるのでしょうか?後編では、カウンセリングを通してEさんが心の闇から抜け出し、少しずつ未来へと歩みを進めていく過程を詳細にお届けします。


※本ショートストーリーはフィクションであり、登場する人物、団体、場所などはすべて架空のものです。実在の人物や団体、出来事とは一切関係ありません。

【監修:Nカウンセリングオフィス

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