希望の道を歩む—パニック障害を発症したEさんの物語【後編】

 

希望の道を歩む—パニック障害を発症したEさんの物語【後編】

 前編で、パニック障害に苦しむEさんが、親友の勧めでオンラインカウンセリングを受ける決意をしたことをお伝えしました。後編では、Eさんとカウンセラーとの出会い、そしてそこからどのように回復への道を歩み始めたのか、その詳細に迫ります。

初めてのオンラインカウンセリング


 Eさんは画面越しにカウンセラー(以下N)の顔を見つめていました。緊張で指がこわばります。カウンセリングを受けると決めたものの、本当に自分が変われるのか、話しても理解してもらえるのか、不安が募っていたのです。

N:「こんにちは、Eさん。今日は来てくださってありがとうございます。こうして一歩踏み出すこと、それだけでもとても大切なことですよ。」

Eさんは少しうつむきながら、小さな声で答えます。

E:「……はい。でも、何を話せばいいのか、うまく説明できるか分からなくて……」

N:「大丈夫ですよ。ゆっくりでいいんです。まずは、最近どんなことがあったのか、話せる範囲で教えてもらえますか?」

パニック障害の発症要因について知る


 Eさんは、数ヶ月間に何度も繰り返したパニック発作、電車に乗ることが怖くなったこと、仕事にも支障をきたし、どんどん外出が億劫になったことを話しました。話しながら、涙がにじんできます。

E:「毎日が怖いんです。また発作が来るんじゃないかと思うと、何もできなくなってしまって……おかしいですよね、こんなことで怯えているなんて。」

N:「いいえ、決しておかしくなんかありませんよ。パニック障害は、誰にでも起こり得ることです。そして、決してEさんのせいではないんです。」

E:「私、ずっと『もっと頑張らなきゃ』って、自分を追い込んできました。完璧じゃないとダメだって。だから、こんな弱い自分になったのは、全部私のせいだって…」

しかし、いざ言葉にしてみてEさんはふと思いまいした。今まで、自分が「弱いから」発作が起きるのだとばかり思っていたけれど、もしかしたら、頑張りすぎて自分に無理をさせていたことが、この苦しみに繋がっているのではないか? 自分を責め続けることが、むしろ不安を増幅させているのではないか? Eさんの心の中に、小さな光が差し込むように、新しい考えが生まれ始めました。

 

N:「発作のメカニズムを知ることで、少しずつ不安を和らげることができます。症状が軽くなるまでの時間は人それぞれ違いますが、まずは一緒に、できることを探していきましょう。」

 その瞬間、画面の向こうのカウンセラーの穏やかな笑顔を見て、Eさんの心の中に小さな希望が灯るのを感じました。

  

確かな一歩、そして希望

 カウンセリングを続けるうちに、Eさんは少しずつ自分の心を理解していきました。発作が起きても「これは命の危険ではない。私が頑張りすぎた心からのサインだ」と思えるようになり、深い呼吸をすることで不安をコントロールする練習をしました。そして、少しずつ行動範囲を広げる挑戦を始めたのです。

 ある日、カウンセリングの中で、Eさんはこう言いました。

E:「先日、久しぶりに電車に乗りました。一駅だけでしたけど、乗る前に心臓がドキドキして怖かった。でも、自分で『大丈夫、これは体の反応だから、息を整えれば収まる』って言い聞かせ、あとカウンセラーさんが教えてくれた呼吸法を試してみたら、何とか乗れました。」

 カウンセラーはEさんの言葉に、心からの喜びを滲ませました。

N: 「それは素晴らしいですね!Eさん、本当に大きな一歩ですよ。想像するだけでも大変だったと思いますが、実際に乗り終えてみて、その後の気持ちはどうでしたか?」


 Eさんは、まるでその時の光景をもう一度心の中で辿るかのように、ゆっくりと、そして言葉を選びながら、一つ一つ噛みしめるように答えました。

N:「……とても嬉しかったです。電車に乗る前は、心臓が潰れるんじゃないかってくらいドキドキして、足がすくんで動けなくなりそうでした。何度も『やっぱり無理だ』って諦めかけましたし、正直、逃げ出したい気持ちでいっぱいでした……


 彼女の瞳の奥には、恐怖と葛藤の記憶がかすかに揺らめいていましたが、すぐにそれを乗り越えた瞬間の輝きが宿りました。 

N:「でも、自分で呼吸法を整えて、一つ、また一つと、駅の景色が流れていくのを見ていたら、本当に自分が電車の中にいるんだって実感できて……。一駅だけでしたけど、ドアが開いて外に出られた時、あんなに怖かったのに、できたことが信じられなくて。まるで、長い間暗闇の中にいた私が、ようやく日の光を浴びたような気持ちでした。本当に、私にもできるんだって……本当に乗れたんです。」


 その時、Eさんの顔には、これまでの苦悩や不安が嘘のように消え去り、澄み切った空のような明るさと、何よりも確かな自信と希望の光が宿っていました。それは、ただ電車に乗れたという事実だけでなく、自分自身の可能性を再発見し、未来に向かって力強く歩み出そうとする、彼女自身の輝きそのものでした。

未来への希望

 Eさんはまだ完全に回復したわけではありません。しかし、もう一人ではないと感じていました。オンラインの画面越しでも、カウンセラーはいつも寄り添い、支えてくれる。そして、Eさんは今、「少しずつでいい。私は、前に進んでいる。」と、未来への希望を持って生きています。

 この物語が、パニック障害と向き合う方々にとって、希望の光となりますように。焦らず、少しずつ、確実に前進することで、新しい未来が開けていくのです。


何気に人気コーナー!?編集後記のお知らせ

 Eさんの物語は、誰もが突然経験する可能性がある病パニック障害の回復に希望を見出し、一歩ずつ前進していく勇気を私たちに与えてくれます。彼女の回復への道のりは、決して平坦ではありませんでしたが、「自分は一人ではない」という確信と、「少しずつでも前に進んでいる」という実感が、彼女の未来を明るく照らしています。

 このEさんの感動的な物語を読んで、あなたはどのようなことを感じたでしょうか?もしかしたら、Eさんと同じような不安を抱えている方もいるかもしれません。編集後記では、このストーリーから得られる心理学的な分析と、具体的なアドバイスをご紹介しています。

 パニック障害がなぜ起こるのか、どのように向き合えばいいのか。Eさんの経験を通して、あなたが今日から実践できるヒントや、専門家へ相談することの大切さについて深掘りしていきます。ぜひ、続けて編集後記もご覧ください。

※本ショートストーリーはフィクションであり、登場する人物、団体、場所などはすべて架空のものです。実在の人物や団体、出来事とは一切関係ありません。

【監修:Nカウンセリングオフィス

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