編集後記：すれ違う心と向き合う勇気

 

　「社会人1年生Mさんの恋と成長」をお読みいただき、ありがとうございます。Mさんの物語は、多くの方が経験するであろう恋愛における不安や、コミュニケーションの難しさをリアルに描いています。

 

Mさんの心に起こっていたこと：愛着欲求と不安

　Mさんの抱えていた「Sさんにとって重要じゃないのかな」という不安や、Sさんの浮気を疑ってしまう気持ちは、愛着欲求が満たされないことから生じていました。愛着欲求とは、大切な人との間に安心できる絆を求める、人間が持つ基本的な欲求です。学生時代にはSさんと密な関係を築き、その欲求が満たされていたMさんにとって、社会人になりSさんが多忙になったことで連絡や会う頻度が減ったことは、安心感を脅かす出来事だったのです。

 

　このような状況では、「見捨てられ不安」や「拒絶されることへの恐れ」が募りやすくなります。MさんがSNSで「忙しい彼氏のサイン」「もしかして浮気？」といった記事に惹かれたのも、この不安を解消したいという心理が働いたためでしょう。しかし、得られた情報はさらなる疑念を生み、Mさんの心を深く傷つけてしまいました。

 

感情の爆発と「Iメッセージ」の重要性

　そして、Sさんとの電話での感情的な衝突。これは、Mさんが抱えきれなくなった寂しさや不安が爆発した結果です。Sさんを責めるような言葉が出てしまったのも、Mさんの心のSOSだったと言えます。

 

　ここでカウンセラーのYさんがMさんにアドバイスした「I（アイ）メッセージ」は、このような感情的な衝突を避けるために非常に有効なコミュニケーションスキルです。「あなたは〜だ」と相手を非難する「You（ユー）メッセージ」ではなく、「私は〜と感じている」と自分の感情を主語にして伝えることで、相手は責められていると感じにくく、冷静に話を聞き入れやすくなります。MさんがSさんに送った「寂しい気持ちになってしまって、ついカッとなってしまった」というメッセージは、まさにIメッセージの素晴らしい実践例でした。

 

自己肯定感と心の余裕

　また、YさんはMさんに「Sさん以外にも安心できる居場所や、楽しめることを見つけること」を勧めました。これは、自己肯定感の向上と依存度の軽減につながります。恋愛関係において相手に過度に依存してしまうと、相手の言動に一喜一憂し、不安になりやすくなります。Mさん自身が満たされる時間を持つことで、心に余裕が生まれ、結果的にSさんとの関係にも良い影響を与えたのです。

 

　Mさんの物語は、恋人との関係に悩んだ時、一人で抱え込まずにプロのサポートを求めること、そして自分自身の心の状態を理解し、コミュニケーションの仕方を工夫することの大切さを教えてくれます。もし今、あなたがMさんのように心のモヤモヤを抱えているなら、この物語が新たな一歩を踏み出すきっかけになれば幸いです。