社会人1年生Mさんの恋と成長【前編】

 

1話:すれ違う心と忍び寄る不安


 食品メーカーの品質管理部に勤めるMさん、23歳。朝は決まって、お気に入りのキャラクターが描かれたマグカップでハーブティーを淹れるのが日課だ。少し神経質なところはあるけれど、与えられた仕事はきっちりこなす真面目さと、周りを気遣う優しさを持つ、ごく普通の女性である。

 

恋の始まりと社会人になってからの変化

 Sとは大学2年生の時に同じテニスサークルで出会い、あっという間に恋に落ちた。他愛ないことで笑い合い、時には真剣な悩みを打ち明け、どんな時も隣にSがいることが当たり前だった。卒業旅行で訪れた沖縄のビーチで、Sが不意に「ずっと一緒にいようね」と言ってくれた時のドキドキは、今でもMさんの心の中で鮮やかに輝いている。

 

 しかし、社会人になって半年が過ぎた頃から、二人の関係に少しずつ影が差し始めた。Mさんの会社は定時で上がれる日も多く、仕事にも慣れてきた。一方、IT企業に勤めるSは、仕事が多忙を極め、連日深夜まで残業することも珍しくなかった。


彼とのすれ違い、募る寂しさ

M「今日、仕事終わったの?」

 Mさんがメッセージを送っても、既読になるのはいつも数時間後。電話をかけても出ないことが増えた。たまに会えても、Sは疲れた顔をしていて、以前のように他愛ない話で盛り上がることも少なくなった。

 

SM、ごめん。今日、どうしても納期が…」

M「うん、わかってるよ。Sも大変だもんね」

 

 口ではそう言っても、Mさんの心には寂しさが募っていく。学生時代のように、気の向くままにデートしたり、くだらないことで夜中まで話し込んだりする時間が、とてつもなく尊いものに感じられた。Sが忙しいのは理解しているつもりだったが、同時に「私って、そんなにSにとって重要じゃないのかな」という不安が頭をもたげるようになった。

 

不安の種は疑惑へ

 そんなある日の夜、Mさんはベッドの中でスマホを眺めていた。SNSのタイムラインをぼんやりスクロールしていると、「忙しい彼氏のサイン」「もしかして浮気?」といった見出しのネット記事が目に飛び込んできた。

 

『残業が増えたと言う彼氏…その理由、本当に仕事だけ?』

『連絡が遅い、会いたがらない…それは愛情の冷め始めかも?』

 

 記事に書かれているチェック項目を一つずつ読み進めるうちに、Mさんの心臓はトクトクと早く脈打った。Sの最近の言動と、記事の記述が驚くほど重なる。

 

M「まさか…そんなはずない」

 

 頭では否定しても、一度芽生えた疑惑はMさんの心を支配し始めた。Sが忙しいと言っているのは、本当に仕事のためなのだろうか。それとも、別の誰かと時間を過ごしているからではないだろうか。これまで真っ直ぐにSを信じてきたMさんの心に、黒いもやが広がっていく。

 数日後、会社帰りの電車の中で、Mさんは何気なくネット検索をしていた。「彼氏 浮気 不安」と打ち込んだ時、ふと、あるオンラインカウンセリングオフィスの広告が目に留まった。

Nカウンセリングオフィス:あなたの心のモヤモヤ、一緒に解きほぐしませんか?』

Mさんの指は、無意識のうちにそのサイトをクリックしていた。

 

 Mさんの不安は確信に変わってしまうのか? それとも、このカウンセリングが二人の関係を救うことになるのだろうか? 事態はさらに緊迫していく――。

 


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