ASDの白黒思考にサヨナラ!心を軽くする「やさしいアファメーション」の魔法

 


はじめに

「 【ASD版】「黒い考え」に支配されそうな時、試してほしいシンプルな言葉と3つの習慣」の記事を読んでくださった皆さん、こんにちは!


 「アファメーション」って、聞いたことありますか? 「私はできる!」「絶対に成功する!」みたいに、ポジティブな言葉を自分に言い聞かせる自己啓発法…なんてイメージが強いかもしれません。


 でも、ASD当事者である自分とって、この「絶対!」とか「100%ポジティブ!」って、実は結構ハードルが高くないですか?

「絶対に大丈夫なわけないじゃん…」

 「そんな風に思えない自分は、やっぱりダメなんだ…」

 そんな風に、ポジティブな言葉が逆に自分を追い詰めてしまう。そんな経験をしたことがある方も、少なくないのではないでしょうか。

 そこで今回は、そんな「無理やりポジティブ」を一切やめた、ASD当事者のための「やさしいアファメーション」をご紹介します。これは自分を無理に変えるためのものではありません。不安の嵐が来た時に、そっと心をガードしてくれる「お守り」のような言葉たちです。


なぜ「やさしい」アファメーションなの?

 そもそも、なぜ一般的なアファメーションがしっくりこないのでしょう?それは、私たちの持つ「白黒思考」の特性と関係があるかもしれません。

  • 0か100かの思考: 「絶対に」と言われると、「絶対じゃなかったらどうするんだ」と0の可能性を考えてしまい、不安が増幅する。

  • 未来への強い不安: 遠い未来の成功を語られても、そこに至るまでの無数の不確定要素に目が行ってしまい、現実味を感じられない。

  • 完璧主義: 「私は素晴らしい」という言葉に、「でも、こんな欠点があるじゃないか」と完璧でない部分を即座に見つけて自己否定してしまう。

 だからこそ、私たちには「強い断定」ではなく、「今の自分」をそっと受け入れるための、特別なアファメーションが必要なのです。


ポイントは5つ。

  1. 断定しすぎない: 「~かもしれない」くらいの、「心の逃げ道」を作る。

  2. 「今」に焦点を当てる: 未来の不安から、意識を「今、ここ」に戻す。

  3. 事実と感情を切り分ける: 頭の中のパニックと、現実を区別する。

  4. 行動を促す: フリーズした状態から、小さな一歩を踏み出すきっかけを作る。

  5. 自己肯定感を損なわない: 自分を責めずに、ありのままを認める。

 それでは、具体的な「やさしいアファメーション」を見ていきましょう。声に出しても、心で唱えてもOK。あなただけのお守りを見つけてみてください。



【実践編】シーン別・心をガードする「お守りの言葉」たち

 以下の例文を状況に合わせて使い分けたり、あなた自身がしっくりくる言葉に言い換えたりしてみてください。

カテゴリ1:不安の波を「やり過ごす」ための言葉

 思考が暴走し始め、パニックになりそうな時に。まずは高ぶった感情の波を、サーフィンのように乗りこなし、穏やかにやり過ごすことを目指します。

「これは、ただの考え。現実じゃない。」 頭に浮かぶ最悪のシナリオは、まだ現実には起きていない「物語」と思い直してみましょう。思考と現実の間に、そっと境界線を引いてみるようなイメージです。

「この不安は、いつか必ず消える。」 感情は天気と同じで、ずっと嵐が続くわけではありません。感情には必ず波があることを自分に言い聞かせ、今の苦しさが永遠ではないと伝えてあげましょう。

「一旦、保留。今すぐ決めなくてもいい。」 「どうにかしなきゃ!」と白黒つけたい衝動が襲ってきたら、この言葉を使ってみましょう(私はこれが結構好きです)。世の中にはグレーなことがたくさんあります。そして、実は今すぐに決定しなくても問題ないことが山ほどあります。「決めない」という選択肢が、「いつの間にかどこかに行ってしまった」そんなあなたぴったりな言葉です。

「大丈夫。呼吸はできている。」 意識をぐるぐる回る思考から、自分の身体感覚へ。いったん深呼吸。ゆっくり息を吸って、ゆ~っくり吐いてから「生きてる、大丈夫だ」と、身体の感覚に意識を戻すことで、思考のループから抜け出しやすくなります(ちょっぴり練習がいりますが、結構、効果的ですよ)。

カテゴリ2:事実と解釈を「切り離す」ための言葉

 「上司に呼ばれた」「LINEの返信が来ない」など、特定の出来事に対してネガティブな解釈が止まらない時におススメです。

「起きたことは一つ。解釈は無限。」 「上司に呼ばれた」という事実は一つ。でもその理由は「怒られる」だけ?「頼みたい仕事がある」「ちょっとした雑談」など、解釈の可能性は無限にあります。この状態に陥っている方って、かなり多いんです。その可能性に、もう一度言います「起きたことは一つ。解釈は無限。」この事実に、 少しだけ心を向けてみましょう。

「これは、私の命に関わる問題ではない。」 不安が大きいと、全てが重大な問題に見えてきます。でも、一歩引いて「これで死ぬわけじゃない」と考えてみると、問題の深刻度を客観的に捉え直し、過剰な恐怖を和らげることができます。

「とりあえず、事実だけを見てみよう。」 自分のネガティブな想像(解釈)ではなく、「〇〇が起きた」という客観的な事実のみに集中する練習です。まるで探偵のように、事実だけを観察してみましょう。ネガティブな主観を入れずに見るのって、結構難しいのですが、某Hさんのように「それってあなたの感想ですよね」しかり、「それって私の感想ですよね」というスタンスに立って、客観的に見つめてみるのがポイントです。

カテゴリ3:小さな「OK」を積み重ねるための言葉

 完璧主義が顔を出し、「もう全部ダメだ…」と感じてしまう時に。100点満点を目指すのをやめて、小さな「OK」を見つける練習です。これって、現代社会においては超絶重要で、このスタンスを持つだけで、メンタルヘルスもできることも一気に増えてきます。

「ここまでできた。それで十分。」 10個やろうとして3個しかできなくても、「7個もできなかった」ではなく「3個もできた」に目を向ける。できた部分を認め、自分に「おつかれさま」と言ってあげましょう。

「50点で花マル。」 私たちはつい100点満点を目指しがち。でも、半分できたらもう「花マル」なんです。不完璧な自分を許すことで、心はぐっと楽になります。

「失敗しても、やり直せる。」 一度のミスが人生の終わりではありません。ゲームのように「セーブポイントからやり直せる」と自分に言い聞かせることで、次の一歩が少しだけ軽くなります。実際問題、ミスっても次のフェーズに入るだけで、ミスらなかった選択肢が本当に自分にとって良かったかなんて誰にもわからないんですよね。なんなら、本当にミスだったのかすら、長期的な視点から見ればわからないんですよね。

カテゴリ4:行動への「小さな一歩」を促す言葉

 不安でフリーズしてしまい、何も手につかない時に。固まった身体と心を、そっと動かすための呪文です。

「まず、一つだけやってみよう。」 やるべきことの全体像を見ると、その大きさに圧倒されてしまいます。だから、タスクをとことん分解!「書類を作る」ではなく「まずパソコンを開く」。その「一つだけ」に集中してみましょう。

「5分だけ、集中する。」 「1時間頑張る」はハードルが高い。でも「5分だけ」なら?タイマーをセットして、5分だけ取り組んでみる。行動への抵抗感を極限まで下げて、最初の一歩を踏み出すための言葉です。

「大丈夫、なんとかなる。」 根拠のない自信ではなく、少しだけ楽観的な視点をレンタルするイメージです。「どうにかなるさ」と呟いてみると、不思議と行動へのエネルギーが湧いてくることがあります。私は今まで、20年以上多くの方とお話してきましたが、「大丈夫、なんとかなる。」というメンタリティーを持って、問題を乗り越えてきた人を物凄く沢山見てきました。


あなただけの「アファメーション」を見つけよう

いかがでしたか?

 これらの言葉は、あくまで一例です。大切なのは、あなたが「しっくりくる」「心が少しだけホッとする」と感じるかどうか。

  • 自分だけの言葉にアレンジする

  • スマホのメモ帳や付箋に書いて、お守りにする

  • 不安になった時に、心の中でそっと唱える

どんな方法でも構いません。

 アファメーションは、自分を無理やり変えるためのテクニックではありません。不安や白黒思考という、手強い特性を持つ私たちが、少しでも生きやすく、自分を責めずに済むようにと編み出された「心の杖」のようなものです。

 実際に上手くできなかったり、肝心な時に忘れてしまっても、自分を責めないでくださいね。 思い出したら、またそっと唱えてみる。その繰り返しが、あなたの心を少しずつ、でも確実に守ってくれるはずです。


【監修:Nカウンセリングオフィス

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