過食は「意志の弱さ」じゃない!本当の原因と今日からできる対処法


 はじめに

 「また食べ過ぎてしまった…」 「お腹が空いていないのに、口が寂しくてつい食べてしまう」 「一度食べ始めると、どうしても止まらない」

そんな風に、食後に自己嫌悪や罪悪感を抱えていませんか?

「自分の意志が弱いからだ」と自分を責めてしまうかもしれませんが、過食は、決して「意志の弱さ」や「だらしなさ」が原因ではありません。

 それは、あなたの心や身体が発している、とても大切なサインなのです。

 この記事では、過食の背景にある本当の原因を紐解きながら、今日からすぐに始められる具体的な対処法を、誰にでも分かりやすくご紹介します。


過食を引き起こす「本当の要因」とは?

 私たちが「食べ過ぎてしまう」行動の裏には、様々な要因が複雑に絡み合っています。代表的なものをいくつか見てみましょう。

1. 心の要因(ストレス・感情)

 私たちの心は、食行動に大きな影響を与えます。

  • ストレス:仕事や人間関係のストレスが溜まると、私たちの身体は「コルチゾール」というストレスホルモンを分泌します。このホルモンは食欲を増進させ、特に甘いものや脂っこいものを欲しやすくさせることが分かっています。

  • 感情のフタ:不安、悲しみ、孤独、退屈といった辛い感情を、食べることで一時的に紛らわそうとすることがあります。食べることで得られる満足感で、心の穴を埋めようとする「感情的摂食」と呼ばれる行動です。

2. 身体の要因(ホルモン・睡眠不足など)

  • 薬の副作用:一部の抗うつ薬や抗精神病薬、ステロイド薬などには、副作用として食欲を増進させるものがあります。

  • 睡眠不足:睡眠が足りないと、食欲を抑えるホルモン(レプチン)が減り、食欲を高めるホルモン(グレリン)が増えてしまいます。夜更かしした後に、ラーメンやポテトチップスが食べたくなるのはこのためです。

  • ホルモンバランス:特に女性は、月経周期や更年期によってホルモンバランスが乱れ、食欲がコントロールしにくくなることがあります。

3. 生活習慣の要因

  • 極端なダイエット:「〇〇は絶対に食べない」といった厳しい食事制限は、かえって特定の食べ物への渇望を強くし、その反動でドカ食いを引き起こす原因になることがあります。

  • 不規則な食事:食事を抜いてしまうと、次の食事で血糖値が急激に上がり、満腹感を得にくくなるため、結果的に食べ過ぎてしまうことが多いです。

自分を知る第一歩「食事記録」を始めよう

「自分の場合は、どの要因が当てはまるんだろう?」

 そう思った方は、まず食事記録をつけてみるのがおすすめです。難しく考える必要はありません。ただ、食べたものを記録するだけです。

【記録の5つのポイント】

  1. いつ(例:15時のおやつ、23時の夜食)

  2. どこで(例:自分の部屋、会社のデスク)

  3. 何を・どれくらい(例:ポテトチップス1袋、菓子パン2個)

  4. 誰と(例:一人で、友人と)

  5. どんな気持ちで(例:イライラして、手持ち無沙汰で、悲しくて)

 そして、5番目の「どんな気持ちで」という感情の記録が、とても重要です。

 記録を続けていくと、例えば「仕事で嫌なことがあった日の夜に、一人で甘いものをたくさん食べてしまう」といった、自分の過食パターンが見えてきます。

 このパターンこそが、あなたの心のサイン。原因が分かれば、対策も立てやすくなります。


今日からできる!具体的な対処法

 原因が見えてきたら、次はいよいよ対処法です。自分にできそうなものから、一つずつ試してみてください。

セルフケア編:自分でできること

  • 食べる以外のストレス解消法を見つける:あなたのストレスの原因は何でしたか?もしイライラが原因なら、食べる代わりに「5分だけ散歩する」「好きな音楽を大音量で聴く」「クッションを殴る(!)」など、別の行動で発散してみましょう。

  • 食環境を整える:つい食べてしまうお菓子やカップ麺を、目につく場所に置かないようにするだけでも効果があります。代わりに、ナッツや果物、ハーブティーなどを常備しておくのがおすすめです。

  • 「ながら食べ」をやめる:テレビやスマホを見ながらの食事は、満腹感を得にくくします。五感を使って「味わう」ことに集中するマインドフル・イーティングを試してみましょう。

  • 自分を労わる時間を作る:疲れているな、と感じたら、ゆっくりお風呂に浸かったり、アロマを焚いたり、何もしない時間を作って自分を甘やかしてあげてください。

専門家への相談編:一人で抱え込まない

 セルフケアを試しても改善が難しい場合や、過食による罪悪感で日常生活が辛いと感じる場合は、専門家の力を借りることも大切な選択肢です。

  • 心療内科・精神科:過食の背景にうつ病や摂食障害が隠れている場合、適切な治療を受けることができます。薬の副作用が気になる場合も、自己判断で中断せず必ず医師に相談しましょう。

  • カウンセリング:臨床心理士や公認心理師などの専門家と対話する中で、過食の原因となっている考え方のクセや、感情との付き合い方を学び、根本的な解決を目指すことができます。

「病院に行くのは大袈裟かも…」と思うかもしれません。ですが、風邪をひいたら病院に行くのと同じように、心が辛いときに専門家を頼るのは、ごく自然なことです。そして、手前味噌です、カウンセリングで言葉にしてみることは、自身の回復力を高める際の非常に大きな力になります。


最後に

 過食は、あなたのせいではありません。頑張りすぎているあなたへの、心と身体からの「ちょっと休んで」「もっと自分を大切にして」というメッセージです。

まずは自分を責めるのをやめて、今日の食事から、少しだけ自分自身に意識を向けてみませんか。

この記事が、あなたが自分自身と優しく向き合う、その第一歩となれば幸いです。



【監修:Nカウンセリングオフィス

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