バーンアウトからの再生—Fさんの物語【前編】

 

バーンアウトからの再生—Fさんの物語【前編】


終わらない日々と心の摩耗

 広告代理店の企画部に勤務する35歳のFさんは、責任感が強く、常にチームのために尽力する人物でした。しかし、ここ最近、仕事のプレッシャーに押しつぶされそうになっていました。

 

 毎朝早くに起き、通勤電車の中でも仕事のことばかり考える日々。職場では会議、プレゼン、クライアント対応に追われ、あっという間に終業時間。家に帰れば、スマホをぼんやり眺めているうちに寝落ちしてしまう。そんな毎日が続き、Fさんの気力も興味も、そして喜びさえも消えつつありました。

 

「こんな生活、あと何年続けられるんだろう」

 

 そう思いながらも、どうすれば良いのか分からないまま、時間だけが過ぎていきました。

  

蝕まれる私生活と恋人との溝

 私生活も、仕事の重圧が影を落としていました。2年ほど前から付き合っている恋人のユリとの関係も、最近はギクシャクすることが増えていました。以前は、週に一度はデートをして、休日は遠出をしたり、Fさんの趣味である映画鑑賞に付き合ってくれたり、と充実した時間を過ごしていました。しかし、最近は仕事の疲れからか、デートの約束も億劫になり、ユリからの連絡もすぐに返せないことが増えていました。

 

 ある週末、久しぶりにユリと会った時のことです。Fさんの心は仕事のことでいっぱいで、会話も上の空でした。ユリが楽しそうに話しているのに、Fさんはろくに相槌も打てず、ついには「疲れているなら、無理して会わなくてもいいよ」と寂しそうに言われてしまいました。その言葉に、ハッとしました。昔は、ユリと会うことが何よりの癒しであり、活力源だったはずなのに、いつの間にかそれすらも負担に感じてしまっている自分に気づいたのです。

 

「このままでは、ユリまで失ってしまうかもしれない…」

 

 心の中で警鐘が鳴りました。大切な人を失うことへの焦りと、それでもどうすることもできない無力感がFさんの心を締め付けました。仕事のパフォーマンス低下だけでなく、プライベートまで蝕まれている現実に、Fさんは深く絶望していました。

   

藁にもすがる思いでカウンセリングへ

 ある日、Fさんは会社の休憩室で先輩のKさんに声をかけられました。

 

Fさん、最近元気ないですね。もしかしたら、カウンセリングを受けてみるのも一つの方法かもしれませんよ。僕も以前、オンラインカウンセリングで救われました。」

 

 Kさんの言葉がFさんの頭から離れませんでした。Fさんはネットで「バーンアウト」について調べ、そこに並ぶ症状が自分にそっくりなことに気づきます。

 

「試してみてもいいかもしれない…」

 

藁にもすがる思いで、Fさんはオンラインカウンセリングの予約を入れるのでした。

 仕事だけでなく、恋人との関係まで悪化させてしまったFさん。オンラインカウンセリングは、彼にどのような光をもたらすのでしょうか?そして、壊れかけた関係を修復し、失いかけた「自分らしさ」を取り戻すことはできるのでしょうか?後編では、カウンセリングを通じてFさんが直面する現実と、再生への道のりを描きます。

 

※本ショートストーリーはフィクションであり、登場する人物、団体、場所などはすべて架空のものです。実在の人物や団体、出来事とは一切関係ありません。

 

【監修:Nカウンセリングオフィス

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