強迫性障害と向き合うーDさんの物語 【前編】

 

強迫性障害と向き合う—Dさんの物語 【前編】


日常を蝕む不安

 Dさんは関東の大学に通う3年生。現在は就職活動の真っ最中です。企業研究やエントリーシートの準備に追われる毎日。しかし、彼女には大きな問題があります。それは、強迫性障害(OCD)による「確認行動」や「不安感」が、日常生活や就活に深刻な影響を及ぼしていることです。

 

 朝、家を出る前にドアの鍵を何度も確認してしまいます。「ちゃんと鍵をかけたはずでももし開いていたら?」という不安が襲い、10回以上もドアノブを引っ張ってしまうのです。外出先では、手洗いの回数が異常に多く、誰かが触った物に触れると、すぐに洗いたくなります。そのため、人との接触を極力避けるようになり、グループ面接や懇親会ではうまく立ち回れません。エントリーシートを提出する際も、何度も文章を読み返し、「ミスがあるかもしれない」と不安が拭えず、締め切りぎりぎりまで修正を繰り返し、時には結局提出できないまま期限を迎えてしまうこともありました。

 

 「完璧にしないとダメだ」という思いが強すぎて、必要以上の時間を費やしてしまうことも多く、授業の課題や就活の予定が狂いがちです。周りに相談したい気持ちはあるものの、「こんなことで悩んでいるなんて、変に思われるのでは?」という恐れから、誰にも話せずにいました。

 

 

新たな一歩:カウンセリングへの決意

 そんなある日、Dさんは大学のキャリアセンターで開催された「就活に向けたメンタルケア講座」に参加します。そこでは、心の健康を保つ方法や、不安との付き合い方について専門家が話していました。

 

 講座の終わりに、講師が言った言葉がDさんの心に深く響きました。 「不安を抱えることは悪いことではありません。でも、その不安が自分を苦しめているなら、一歩踏み出してみることが大切です。」


 Dさんはこの言葉をきっかけに、インスタグラムで見つけたオンラインカウンセリングを受けてみることを決意します。スマートフォンの画面を見つめながら、深く息を吐きました。「本当に大丈夫かなうまく話せるかな」指先は画面の端をそっとなぞります。ビデオ通話の開始ボタンを押せば、もう後戻りはできません。


 「よし」そう呟いて、覚悟を決めました。画面にカウンセラーの優しい笑顔が映ったその瞬間、Dさんの新たな挑戦が始まったのです


 この後、Dさんはカウンセリングで自身の悩みを打ち明けることができるのでしょうか?そして、長年Dさんを苦しめてきた強迫性障害と、どのように向き合っていくのでしょうか?物語の続きは後編で明かされます。

 

※本ショートストーリーはフィクションであり、登場する人物、団体、場所などはすべて架空のものです。実在の人物や団体、出来事とは一切関係ありません。

 

【監修:Nカウンセリングオフィス

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