HSPって甘えですか?―JさんのHSPが“資質”になるまでの道のり【前編】

 
HSPって甘えですか?―JさんのHSPが“資質”になるまでの道のり【前編】


【図書館の優秀な司書と誰にも言えない秘密】

 朝の光が差し込む静かな図書館。Jさんはカウンター越しに笑顔で来館者を迎え、本棚を整え、予約本のチェックをしていた。社会人6年目の彼女は、有名大学を卒業し、司書として働いている。利用者からの信頼も厚く、声をかけられることもしばしば。

 

同僚:「Jさん、この間リクエストしてた絵本、入りましたよ!」

Jさん:「ありがとうございます。子どもたち、きっと喜びますね」

 

 そんな日常の中で、Jさんには誰にも言えない“秘密”があった。

 

——HSPHighly Sensitive Person

 他人の感情や場の空気を過剰に察知してしまい、日々、目に見えないストレスと戦っていた。

 

・職場のざわめきが気になって本に集中できない

・イライラしている利用者がいると、自分まで気分が沈む

・「気にしすぎ」と笑われ、自己嫌悪に陥る

 

【心の限界】

 帰りの電車。混雑の車内でJさんはため息をついた。あの利用者の不機嫌な顔、同僚の何気ない一言が、胸に刺さって離れない。

 

Jさん:「私、向いてないのかな…。でも、今さら辞める勇気もないし…」

 

 スマホをぼんやりと眺めていたそのとき、目に飛び込んできた広告。

Nカウンセリングオフィス~あなたの敏感さを強みに変える方法~』

 

Jさん:「オンラインカウンセリングか…。でも、人に自分の弱さを話すなんて…」

(もう、このままじゃ潰れてしまいそう…)

 

 そして、震える手で「予約する」ボタンを押した。

 

【はじめてのカウンセリングとアンテナという新しい視点】

──数日後。画面越しに現れたのは、柔らかな笑顔の30代男性・Yカウンセラー。

 

Yさん:「こんにちは、Jさん。大丈夫ですよ、ここは“話しても怒られない場所”ですからね」

 

 その言葉に、ふっと肩の力が抜けた。

  涙ぐみながら、Jさんは少しずつ言葉を紡いでいった。HSPとして生きづらさを感じていること、職場で人の感情に影響されすぎて疲弊していること。

Jさん:「私、向いてないんです。全部が自分の責任のように感じてしまって…」

Yさん:「Jさん、あなたの感情のアンテナ”は高性能なんです。これは弱さじゃなく資質です」

Jさんの胸に、Yカウンセラーの言葉がじんわりと染み渡る。「資質…?」頭の中でその言葉を反芻する。

Yさん:「アンテナは感度調節ができます。今は、全チャンネルを拾って疲れているだけ。必要な感情だけ受け取れるフィルターを一緒に作っていきましょう」

Jさんはハッとした。(フィルター…そうか、全てを受け止める必要はないんだ。でも、どうやって?)Yカウンセラーはいくつかの提案をしてくれた。

 

 ★ “5秒ルール”──感情を感じたら5秒間、自分に問う。“これは私の問題?”

 ★ “静かな書架タイム”──昼休みは図書館の奥で一人になる時間をつくる

 ★ “感情日記”──11回、自分の感情を整理して書き出す

 

【小さな一歩と新たな悩み】

Yさん:「まずは『5秒ルール』からやってみてください」

Jさん:「…やってみます」

 

 その日、Jさんは少しだけ心が軽くなった気がした。

 

──しかし、カウンセリングの回を重ねていく中で、思わぬ出来事が起こる。

 

 ある日、図書館でクレーム対応をしていた同僚のMさんが、声を荒げて戻ってきた。

 

Mさん:「もう、あの人ほんと無理! Jさん、ああいうの得意でしょ?」

 Jさんは戸惑った。確かに相手の感情を読むのは得意。でも、それは“便利屋”扱いされるためじゃない…。

 

 その日の帰り、Jさんは静かに泣いた。

 

Jさん:「私、どうしたらいいの? 敏感であることを“利用”されてるだけじゃないの…?」

 

スマホのカレンダーを見ると、次のカウンセリングは明日だった。

 

Jさん:「Yさんに、ちゃんと…話してみよう」

 

心の奥に、これまでにない怒りと悲しみ。そして、変わりたいという気持ちが生まれていた。

でもその中には——
確かに芽生え始めた「変わりたい」という意志があった。

次回、Yカウンセラーの一言がJさんの心を動かす。
そして、ある“意外な出会い”が、彼女の敏感さを本当の意味で「強さ」へと変えていく——。


※本ショートストーリーはフィクションであり、登場する人物、団体、場所などはすべて架空のものです。実在の人物や団体、出来事とは一切関係ありません。

【監修:Nカウンセリングオフィス



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