対話が拓く未来:Nさんの物語と共創のヒント【前編】

対話が拓く未来:Nさんの物語と共創のヒント【前編】

 

大学の太陽、Nさん

 大学のキャンパスに、今日もNさんの明るい声が響き渡ります。Nさん、29歳。大学の学生生活課で働く社会人7年目の女性です。スラリとした長身に、いつも笑顔を絶やさない彼女は、学生たちからも慕われる存在でした。大学時代はボランティアサークルに所属し、持ち前の真面目さと活発さで、地域のお祭りから子ども向けの学習支援まで、あらゆるイベントを成功に導いてきました。人情に厚く、困っている人を見れば放っておけない。そんなNさんの周りには、いつも自然と人が集まってきます。彼女の艶やかな黒髪のサラサラとしたロングヘアは、その明るい笑顔と相まって、より一層親しみやすい雰囲気を醸し出しています。

学生A「Nさん、この前の企画、めちゃくちゃ面白かったです!」

学生B「Nさんがいると、なんか安心しますね!」

 そんな学生たちの言葉が、Nさんの日々の原動力です。彼女はまさに、大学の太陽のような存在でした。

 

新しい挑戦への情熱

 Nさんは今、新たな学生イベントの企画に熱中しています。その名も「地域交流フェスタ」。学生たちが主体となって、地域住民と一緒に楽しめる、体験型のイベントです。Nさんのデスクには、アイデアを書き込んだ大きな模造紙が広げられ、カラフルなペンが並んでいます。Nさんの表情は真剣そのものですが、瞳には期待と情熱が宿っていました。


 彼女の頭の中には、地域の特産品を使った屋台、学生バンドのライブ、子ども向けのワークショップなど、楽しそうなアイデアが次々と湧き上がってきます。この企画は、単に学生と地域を繋ぐだけでなく、学生たち自身の自主性を育み、企画から運営までを自分たちの力で成し遂げる経験を積ませたいというNさんの強い思いから生まれました。地域の方々にとっても、大学が単なる教育機関ではなく、地域に開かれた活気ある場であることを知ってもらう絶好の機会になると信じていました。Nさんは、このフェスタを通じて、学生と地域が共に成長できる、新しい「共創」の形を夢見ていたのです。

 

立ちはだかる職場の壁      

 しかし、企画を進める中で、Nさんは大学ならではの人間関係の複雑さに直面していました。学生生活課内で企画の概要を共有しただけで、すぐに様々な部署から意見や懸念が飛び交い始めます。


職員A 「学生課だけじゃなくて、広報課や地域連携室とも連携が必要だね。彼らの意見も聞いておかないと後で面倒になるよ」 

職員B 「予算はどこから出すのか、教務課とも調整しないと。学生の課外活動費だけでは賄いきれないだろう」 

職員C 「学生主体と言っても、結局は職員が動くことになるんだから、あんまり手間のかかることはやめてほしい。前例のない企画は特にね」


 Nさんは、それぞれの部署にそれぞれの立場や役割があることは理解していました。しかし、意見の中には、Nさんの企画の根幹を否定するような、強い抵抗を感じさせるものも少なくありませんでした。

 

ベテラン職員Aさんの高い壁

 特に、地域連携室のベテラン職員であるAさんは、Nさんの企画に対して常に懐疑的でした。Aさんは大学に長く勤め、数々の企画を成功させてきた実績を持つ一方で、堅実さと前例踏襲を重んじる人物です。彼の発言は、いつもNさんの情熱に冷や水を浴びせるようでした。彼の短く整えられた白髪が、その経験の長さを物語っています。


Aさん「前例がない。これまで学生が主体となって、これほど大規模な地域イベントを成功させた例はない」「リスクが大きい。万が一トラブルが起きた場合、大学の信用問題に関わる」 「学生に任せきりは無責任だ。結局、最後は我々職員が尻拭いをすることになるだろう」


 Aさんの言葉は、Nさんの情熱を少しずつ削っていきました。Nさんは、Aさんの言葉を聞くたびに、まるで分厚い壁にぶつかっているかのような閉塞感を覚えます。彼女がどれほど熱意を込めて企画を説明しても、Aさんの表情は変わらず、常に冷静で、どこか冷淡にさえ見えました。

 

理想と現実の狭間

Nさん「もっと、学生の主体性を引き出すような企画にしたいんです!彼らの自主性を尊重し、成長の機会にしたいんです!」 「地域の方々にも心から喜んでもらえるような、新しい風を吹かせたいんです!大学が地域と共に歩む姿勢を示すためにも、意義のあることだと思います!」Nさんは食い下がりますが、Aさんの表情は変わりません。


Aさん「Nさんの気持ちはよくわかる。情熱があることも評価している。だが、私たちは大学の職員として、大学の安定運営という大局も考えなければならないんだよ。理想だけでは組織は動かない」


 この言葉は、Nさんの胸に重く響きました。自分の理想だけでは、組織は動かせない。そう突きつけられているようでした。会議が終わるたび、Nさんは疲労感と無力感に襲われます。学生たちのために、地域のために、と奮起する気持ちはあるのに、組織の壁はあまりにも高く、分厚く感じられました。

 

積み重なるストレス

 自宅に帰っても、Nさんの頭の中はイベントのことでいっぱいです。企画書の修正、関係部署への根回し、学生ボランティアの募集、そして何よりもAさんとのやり取りが、Nさんの心を占めていました。


 Aさんの言葉が、Nさんの心に重くのしかかります。


 「私は、独りよがりなのかな…… 


「私の考えは、甘いのかな……。こんなに頑張っているのに、なぜ誰も理解してくれないんだろう」


 そう自問自答を繰り返すうち、Nさんは自信を失いかけていました。かつては太陽のように明るかった彼女の心に、暗い影が差し込みます。夜も眠れなくなり、食欲も落ちていきました。

 

友人の言葉とオンラインカウンセリングへの一歩

 鏡に映る自分は、以前のような明るい笑顔を失い、目の下にはうっすらとクマができています。週末は、気分転換にと友人と出かけることもありましたが、心から楽しむことができません。ふとした瞬間に、職場の人間関係のことが頭をよぎり、憂鬱な気持ちになってしまうのです。このままでは、自分が壊れてしまうのではないかという漠然とした不安がNさんを襲いました。


 ある日のこと、ランチを共にした同期の友人が、Nさんの変化に気づきました。


友人「N、最近元気ないね?何かあった?」


 その言葉に、Nさんは堰を切ったように、これまで抱え込んでいた苦しみを話し始めました。企画の難航、Aさんとの対立、そして心身の不調まで、まるで堰が決壊したかのように、Nさんの口から次々と本音があふれ出しました。


友人はNさんの話をじっと聞いてくれました。

そして、Nさんが話し終えると、友人はそっと言いました。


友人「N、一人で抱え込みすぎだよ。無理しなくていいんだ。私にも経験があるからわかるよ。もしよかったら、オンラインカウンセリングとか受けてみたら?私も以前、似たような経験があって、すごく助けられたんだ」


 オンラインカウンセリング。Nさんにとっては、これまで縁のない世界でした。正直、最初は少し抵抗がありました。


「カウンセリングなんて、私には関係ない」そう思っていたのです。


 しかし、この状況を打開できるなら、何でも試してみたい。藁にもすがる思いで、Nさんは友人が教えてくれた「Nカウンセリングオフィス」のウェブサイトを開きます。そこには、Yさんというカウンセラーの紹介が載っていました。

 Nさんは、意を決して予約フォームに必要事項を打ち込みました。その日の夜、ベッドに入ってもNさんはドキドキが止まりませんでした。 


「どんな人が出てくるんだろう?」 


「何を話せばいいんだろう?うまく話せるかな……


 期待と不安が入り混じったまま、Nさんは浅い眠りにつくのでした。この一歩が、Nさんの閉ざされた心と停滞した企画に、新たな光をもたらすことになるなど、この時のNさんは知る由もありませんでした。後編はコチラへ


本ショートストーリーはフィクションであり、登場する人物、団体、場所などはすべて架空のものです。実在の人物や団体、出来事とは一切関係ありません。


【監修:Nカウンセリングオフィス

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